禁煙外来

写真:タバコイメージ

いまやTVCMなどですっかりお馴染みになりました「禁煙外来」。

これは決して特殊な外来ではありません。いまだ日本におきましては減ってきたといっても喫煙習慣を持つ方は沢山いらっしゃいます。日本では元々「専売公社」があり、ある意味国を挙げて一大産業として「たばこ」と取り扱ってきた歴史もあり、先進国の中ではいまだに禁煙に関してはかなり遅れています。

「たばこがやめられない」というのは当たり前です、誰でもそうです。それは「意志の問題」ではありません。れっきとした「ニコチン依存症」という病気なんです。

ひとえに「依存症」と言っても「精神的依存」と「身体的依存」の二種類があります。身体的依存はタバコをやめることにより「イライラする」「落ち着かない」などの「不快な症状がでることによりやめられない」というものです。元々は「タバコを吸っていた影響で吸わない時が脳が機能低下状態」になり、「タバコを吸うことによって一時的に吸わない人の脳と同じようになる」だけにも関わらず、だんだん感覚が鈍くなることによって「タバコを吸ったらすっきりした」みたいに感じてしまうのです。

また、ニコチンが直に脳の中のある回路に作用することにより快感を得る仕組みも明らかになっております。ちなみにこの回路は覚醒剤やコカインなどがやめられないのと同じ回路です。このように実際に脳に影響を及ぼして依存させてしまうような状態が「身体的依存」と言われます。

「精神的依存」は「心の問題」になりますが、「何を差し置いてもニコチンを摂取することが最優先」という状態で、コントロールの効かない状態になっていることを指します。

この二つの「依存症」が絡み合って出現することにより、禁煙することが困難になるのです。 喫煙は良い事は全くありません。少なくとも現在までの様々な研究で明らかになっているところまでで「タバコが健康に良い」となっているものはありません。タバコの害としては「肺癌」「肺気腫」とか「心筋梗塞」とかが有名ですが、実際にはそれだけではありません。例えば癌でいえば「腎臓癌」「喉頭癌」「食道癌」「膀胱癌」「膵癌」「胃癌」「肝癌」「大腸癌」「白血病」これらは喫煙により危険が増加します。決して肺癌だけではありません、山ほどあります。その増加率は各研究によって幅はあるものの大体2倍以上と考えて頂ければ良いと思います。ただ、例えば「喉頭癌」などはタバコに「飲酒」が加わると一気に「30倍以上」になるものあり、やはり喫煙により癌にかかる危険は明らかと言わざるを得ません。

循環器の病気では、喫煙による心筋梗塞の影響は世界50か国で行われた大規模の研究にて吸わない人より「3倍」増えると発表されました。これは高血圧や肥満より高い数値であったとのことです。なお、日本での研究でも「1日20本以内の喫煙者の心臓病での死亡の危険」は非喫煙者に比べて「4.2倍」、「1日20本以上」は「7.4倍」と発表されています。 また脳梗塞や脳出血は「2倍」、くも膜下出血は「4倍」・・・・もうはっきりしているだけでもきりがないほどです。さらに「肝疾患」「膵疾患」「腎臓病」、「不妊」「子供の発育障害」などなどあります。

最終的な話として、実際に日本人男性(60才から64才)で調べた研究では「タバコを吸い、沢山飲酒をして、太っている人」は「10年後(70才台)に6割弱しか生き残っていない」という結果が出ております。様々な研究から総合すると「日本人男性はタバコを吸うことにより4年寿命を縮めている」と言えるようです。本当です。

しかもこれは本人だけの問題ではありません。ご家族や同僚など「タバコを吸わない周りの身近な人」に多大な悪影響を及ぼします。タバコを吸わずともタバコを吸う人が身近にいることによって、タバコの煙を吸わされることを「受動喫煙」と言いますが、最近はこれが非常に注目されています。実際にタバコを吸わない「受動喫煙」でも脳梗塞や癌や喘息などの危険を「2倍」程度高めると言われています。また妊婦が受動喫煙することにより妊娠状態自体に危険が及ぶのみならず胎児に知能低下が現れたり、これから生まれてくる子供にさえ悪影響が出ると言われているのです。

これだけ様々なことがわかってきましたので、やはり「禁煙」は絶対に必要と言えます。しかも基本的に「禁煙は早ければ早いほど良い」と言われています。肺癌でイギリスでの研究では同じ禁煙でも「40才で禁煙」よりも「60才で禁煙」の方が「3倍以上」肺癌にかかる危険が増加しているのです。是非一日でも早く取り組んで頂きたいと思います。

当院では忙しい皆さんでも通える身近なところで、一日も早く禁煙に取り組んで頂きたいと思っております。治療そのものは「専用の薬を飲む」もしくは「専用の貼り薬を貼る」(ガムは健康保険が使えません)ということになります。ご本人と担当医師が相談して決めていくことになります。 初回は様々な書類記載や検査(どのくらいタバコを吸っていたか?他の肺の病気の危険性はないか?)など定められた手続きを複数行っていただかなくてはなりませんが、二回目以降は基本的には問診と「禁煙できているかどうかの検査」を行うだけです。そして12週(3か月)で計5回受診、その段階で一旦終了となります。治療費は保険診療で大体2万弱程度と考えて頂ければよいかと思います。

今タバコを吸われている方で、これからも長く第一線で活躍し続けて行きたい、これからも長く健康で人生を楽しみたい、と思っている方は是非ご検討下さい。

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